ライ麦畑でつかまえて【あらすじ・書評・考察】
J.D.サリンジャー著 村上春樹訳の「キャッチャー・イン・ザ・ライ(ライ麦畑で捕まえて)」です!
1.あらすじ
2.向いている読者
3.書評、考察
1.あらすじ
主人公は、周りの全ての物事がインチキに見える17歳のホールデン・コールフィールド少年。
ホールデンはクリスマス前に、通っている学校を成績不良を理由に退学になってしまう。また周囲のルームメイトや先生等に嫌気が差したホールデンは、一人電車に乗り、ニューヨークへ向かうのだった。
この本はJ.D.サリンジャーによって書かれています。サリンジャー自身、マンハッタン在住で学校を退学した経験を持っており、「マディソン街のはずれの小さな反抗」で自身を反映させた存在としてホールデン・コールフィールド少年が登場していることから、この「ライ麦畑で捕まえて」も自らの経験に基づいた作品だと思われます。
この本が発行されて約半世紀経った2007年の時でも、毎年50万部売れているという伝説的な名著です。
ちなみに、題名は「ライ麦畑でつかまえて」ですが、ライ麦畑が舞台になることはなく、実際の舞台はニューヨークです。
2.向いている読者
この本はこういった考えのある方ならば間違いなく買って損はないと思います。
- 社会に対してどうも馴染めないところがある。
- 大人全般が嫌いだ。
- 昔、あらゆることに関して反抗的だった頃がある。
- 生き方について考えている。
- 今、思春期だ。
僕はこの本に共感できたのですが、全く社会に対して疑問に思うことが無い方は、この本を読んでも退屈な気がします。
逆に、少しでも大人に対する不信感などを持ったことがある方であれば、この本はきっとかけがえのないものになると思います。
キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション)
- 作者: J.D.サリンジャー,J.D. Salinger,村上春樹
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2006/04/01
- メディア: 新書
- 購入: 11人 クリック: 73回
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3.書評、考察
タバコ、酒、バーなどの様々な大人の世界に挑戦するもことごとく挫折を味わうホールデン少年。彼に残る子供の部分が、ことごとく大人の社会から拒絶されていきます。
この本のすごい点は、大人に対して強い反感を持っているにも関わらず、どこか大人に憧れて真似してしまうという複雑かつ屈折した思春期の心理と苦悩を見事に描き切っているところだと思います。
またホールデンの毒舌っぷりが絶妙におもしろい。
個人的にはホールデン少年は最後に自殺をしてしまうのではないかと、ずっとやきもきしていたのですが、最後はハッピー(?)エンドでよかったです。
最後に、ホールデンが買ったハンチング帽について個人的な見解を(勝手に)解説したいと思います。
これをホールデンが後ろに被っているのは、野球の「キャッチャー」と同じだからであり、つまりこの帽子を被っている人は「ライ麦畑のキャッチャー」を暗示しているのです。
ライ麦畑のキャッチャーというのは、妹フィービーとの会話の際に出てきた
「僕がライ麦畑から落ちようとする子どもを止めるキャッチャーになるんだ」のくだりのことです。
ホールデンはその帽子をDBの寝室でフィービーに渡します。その後、行く宛ても無く西部で暮らそうとしていたホールデンですが、フィービーと会うことによりニューヨークにある家に帰る決心が付くのです。ホールデンはこのまま無軌道に西部に向かっていたら、大人のインチキに嫌気が差して自殺していたかも知れません。そう、つまりフィービーの純粋さこそが「ライ麦畑のキャッチャー」だったのです。
……そう考えると、フィービーがホールデンに帽子を返した際に、前被りにしたか後ろ被りにしたかによって、これからの話の続きが変わってくるわけです。ですがサリンジャーは帽子を被せた向きまでは明示していません。この想像する余地があるところが文学(小説)のおもしろいところですね。
キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション)
- 作者: J.D.サリンジャー,J.D. Salinger,村上春樹
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2006/04/01
- メディア: 新書
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